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賃貸借契約は法律行為ですから、たとえ家族であっても父親名義の契約の主体者になることはできません。ましてや、意思能力や判断能力がなくなっている状態の父親があたかも判断をしたかのような体裁(代筆)を権限のない家族が行うことには、実は法律上、大きな問題があります。

同様に、今の状態では、将来発生する「大規模修繕」や「建替え」「売却」といった判断を必要とする行為は、原則的に行うことが難しいといえます。

家族信託を利用すると・・・

不動産はアパートが2棟あって、子どもは男女1人ずつですので、所有者である父親を委託者として、例えばA物件については長男を受託者とします。そして利益(この場合は賃料)を受け取る権利は父親、つまり受益者は父親とします。B物件についても同様に父親を委託者兼受益者とし、長女を受託者とします。そして父親が元気なうちは、長男、長女と一緒にそのアパートを管理していけば問題ないでしょう。

もし将来、父親が意思能力を判断能力を失う事態に陥った場合、今度は受託者である子どもたちが明確な財産の管理処分権限をもって、「賃貸借契約書」はもとより、「大規模修繕」や「建替え」、もしくは「売却」といった行為を行うことが可能です。

何よりも、意思判断能力を失った父親の「代筆」をして契約行為を行うという「法的に問題のある行為」から解放されます。

もちろん、信託契約書には、将来相続が起きた場合、それぞれの物件の承継先をA物件は長男、B物件は長女としておけば、別途遺言で指定したり、相続発生後に遺産分割協議をしなくても、自分の意思どおりに相続させることができます。

事例3 共有不動産のトラブル回避

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