家族信託と遺言の違い
遺言は「単独行為(自分一人で行う行為)」ですので、自分一人で「誰に財産を遺すか」を決めることができます。反面、単独行為であるがゆえに、いつでも遺言の書き換えや取消が可能です。本人が亡くなるまで効力が発生しないので、何度でも書き換えられます。そのため、判断能力が若干低下してきたときに、利害関係人からの圧力で遺言の書き換えが他の利害関係人に知られずに行われるリスクも生じます。
これに対し家族信託は「契約」で生前の財産と管理とさらに相続発生後の承継先などを受託者に託す形式ですので、「単独行為」ではありません。委託者の想いや希望をしっかりと伝えたうえで受託者に託すことができるため、本人が亡くなった際の遺産の分配などについて、家族の理解を得られやすい方法といえます。
また、内容の変更に関しても、家族信託は元気なうちに交わした契約が効力を発揮しますので、もし内容を変更したいのであれば、一般的には受託者との合意のうえで変更することになり、勝手には変えにくい仕組みともいえます。
つまり、判断能力が低下してきたようなときに、利害関係人からの圧力で遺言内容が恣意的に書き換えられるといったことを排除でき、元気なときにクリアな頭で決めた財産管理の資産承継に関する希望を、相続発生時まで維持できるという点で、遺言とその役割が異なります。
遺言機能としての家族信託
遺言の場合は、誰に譲るかという「所有権の移転」で終わるため、財産を受け取った人は、その財産を自分で管理する必要があります。
信託の仕組みで遺言の機能を持たせる場合には、単に財産を譲るだけではなく、その財産については「受託者」という管理者を決めることになります。
例えば、高齢の父親が他界し、その財産を高齢の母親にわたそうと思った時に、通常の遺言だった場合、財産を相続した母親がその時点で認知症を発症していたとすれば、相続した財産の管理をするためには成年後見人等が必要になります。
ところが、家族信託を使った財産の移転を行なえば、単に財産をわたすだけでなく、受益者を母親、管理する受託者を長男にすることで、認知症となった母親に代わって長男が「財産管理を行なえる仕組みを残す」ことができるのです。
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